Musicadentro

第100号 (22/02/2009)

既にイタリアではサンレモ音楽祭も佳境を迎えていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?Musicadentro 本編も今回で 無事100号を迎えることができました。今回はプログレ系バンド3組とデュオ2組の新作をお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

ProgFamily

Osanna & David Jackson / Prog Family (2009) AMS, AMS 150 CD. (全17曲)

'70年代に活躍し、21世紀になって復活したプログレッシブ・ロック・バンド Osanna が元 Van Der Graaf Generator (VDGG) の David Jackson (sax, fl) を迎えて発表した最新アルバム。Osanna のメンバーは Lino Vairetti (vo, g) と Gennaro Barba (ds) を除いて一新され、Nello D'Anna (b), Fabrizio Fedele (g), Sasa' Priore (key), Irvin Luca Vairetti (key, vo) を加えた6人編成になっています。さらに、元 King Crimson の David Cross (vln) や Il Balletto di Bronzo の Gianni Leone (key) などの豪華ゲストを迎え、ゴージャスな演奏を繰り広げています。収録曲はこれまで発表されたアルバムから万遍なく選曲され、前回の再結成時に発表された "Taka boom" の内容を踏襲したものになっています。彼らの美意識を凝縮したような1曲目の "Milano Calibro 9" の "Tema" から畳み掛けるような展開を見せる "Animale senza respiro" へと続くオープニングからミステリアスな雰囲気を漂わせたテクニカルな演奏が繰り広げられています。唸りを上げるオルガンと躍動的なベースが攻撃性を醸し出す "Mirror train" や 叙情的なフルートに導かれた "L'uomo"、VDGG を想起させるサックスが大活躍するファンキーな "Ce vulesse ce vulesse" など David Jackson を大々的にフィーチャーした演奏は迫力満点です。また、終盤では軽快でジャズ色の感じられる Citta' Frontale の "Solo uniti" や 歪んだ音色のオルガンと攻撃的なサックスが印象的な VDGG のインスト曲 "Theme One" も収録されており、ラストはバンドのみの演奏による叙情的なヴォーカル・ナンバー "There will be time" で締め括られています。

IlGenio

Il Genio / Il Genio (2008) Cramps Music, 0602517905214. (全14曲)

Gianluca De Rubertis (key, g, vo) と Alessandra Contini (b, vo) による男女デュオのファースト・アルバム。ほとんどの曲は2人による共作となっています。オープニングの "Le bugie di Francois" から囁くように歌われる Alessandra のコケティッシュなヴォーカルとエレポップ色の強いアレンジが相まって、イタリア語で歌われているにもかかわらずまるでフレンチ・ポップを聴いているかのような錯覚を受けます。Gianluca の低音の呟きに導かれた "Non e' possibile" では Alessandra のウィスパー・ヴォイスとミステリアスな演奏が相まってフランスの Robert のようなデカダンスを感じさせます。シングル曲となった "Pop porno" は軽快な曲で、サビの繰り返しを多用した後の叙情的なメロディが印象的です。Gianluca がメイン・ヴォーカルと務める "Tutto e' come sei tu" でも囁きかけるような歌声と Alessandra の寄り添うようなコーラスにフレンチ・ポップからの強い影響を感じ取ることができます。また、カンフーのかけ声を模したフレーズが飛び出す "Gli eroi del Kung-Fu" やベートーベンの「悲愴」のテーマをモチーフにフランス語詞を付けた "La pathetique" などいろいろなアイディアが満載で、この手のユニットとしては曲のバリエーションが広いのが特徴です。イタリアの Wikipedia では「渋谷系」との記述があり、確かに日本のカヒミ・カリィなどとの共通点が感じられます。

Leggenda

VIII Strada / La leggenda della grande porta (2008) Ma.Ra.Cash Records, MRC 016. (全7曲)

1994年に結成されたシンフォニック・ロック・バンド VIII Strada (Ottava Strada) の満を持して発表されたファースト・アルバム。メンバーは Tito Vizzuso (vo), Davide Biscardi (g, cho), Silvano Negrinelli (p, key, cho), Davide Maltagliati (b, cho), Riccardo Preda (ds, key, cho) の5人編成で、Silvano Negrinelli が全ての曲の作詞作曲を手掛けています。オープニングを飾る11分を越えるタイトル曲 "La leggenda della grande porta" から畳み掛けるリズム・セクションをバックに官能的なフレーズを紡ぎ出すギターと幾重にも折り重なるキーボード・ラビリンスを中心に男性的なヴォーカルが力強く歌い上げる怒濤のシンフォニック・ロックが繰り広げられています。続く "Mediterranea" では北アフリカの影響を感じさせるギターのフレーズが飛び出したりアイディアが豊富です。畳み掛けるリズムをバックに歪んだ音色のギターが大活躍する "Ulysses" では切々と訴えかけるように歌われるメロディと豪快なインスト・パートの対比が印象的です。ハード・エッジなギターのリフに導かれた11分を越えるインスト曲 "Sinergy" では強固なリズム・セクションの上を歪んだギターとクラシカルなピアノを中心に曲が進行していく典型的なヘビィ・シンフォが繰り広げられています。収録曲のどれもいろいろなアイディアが練られており、また、メンバー全員がコーラスを務めるなどこの手のバンドには珍しくヴォーカル・ハーモニーが充実しているのも特徴となっています。

A24

Pquadro / A24 (2008) Air Music, 5051442988826. (全10曲)

2004年に結成され、2006年にシングル・デビューした Pietro Napolano と Piero Romitelli によるデュオ Pquadro のファースト・アルバム。メローなサックスに導かれたほのかにR&Bからの影響を感じさせるオープニングの "Francesca" から声質の異なる2人によるヴォーカルの掛合いを楽しむことができます。2007年のサンレモ音楽祭参加曲 "Malinconiche sere" では軽快なリズムを刻むギターのアルペジオをバックに軽やかに歌い上げる哀愁を帯びたコーラス・ハーモニーが醸し出す叙情性が印象的です。しっとりとしたメロディを持つ "Predutamente m'innamorero'" ではパート毎に歌い分ける囁きかけるようなヴォーカルの掛合いが曲を盛り上げています。スパニッシュ調のイントロで始まる "Cinque" ではHIP・HOPからの影響を感じさせるリズミカルなヴォーカルへと突入する展開が印象的です。リリカルなピアノに導かれた "Fratello minore" では日本のケミストリーを想わせる爽やかなコーラス・ハーモニーを聴かせてくれます。また、ディズニー・チャンネルのオリジナル映画「High School Musical 2」のテーマ曲 "You are the music in me" のイタリア語バージョン "Tu sei la musica in me" も収録されています。

Colombo

Il Cerchio d'Oro / Il viaggio di Colombo (2008) Black Widow, BWRCD 109-2. (全13曲)

1977年にシングルをリリースしたプログレッシブ・ロック・バンド Il Cerchio d'Oro が再結成してリリースした最新アルバム。オリジナル・メンバーの Franco Piccolini (p, organ, Key, cho), Gino Terribile (ds, perc, vo, cho), Giuseppe Terribile (b, ac-g, vo, cho) の3人に Piuccio Pradal (ac-g, vo, cho) と Roberto Giordana (el-g, cho) を加えた5人編成となっています。タイトルにもあるように本編はコロンブスの大航海をテーマにした11のパートからなるコンセプト・アルバムになっています。リリカルなピアノに導かれて始まるオープニングの小品 "Overture" から、ワルツのリズムを刻み叙情的なギター・ソロが繰り広げられる "Sognando la meta" へと続く展開に早くも引き込まれます。Le Orme からの強い影響を感じさせる "Colombo" では唸りを上げるオルガンと直線的なドラムの掛合いとたおやかな歌メロとの対比が印象的です。音色の異なる2本のアコースティック・ギターの爪弾きに導かれた "I tre marinai" では交互に表れる叙情的なヴォーカル・ラインと畳み掛けるようなインスト・パートの繰り返しが幽玄な雰囲気を漂わせています。"Ieri, oggi, ancora niente" では New Trolls を意識したような絶妙なコーラス・ハーモニーを聴かせたりとエンディングのヴォーカル曲 "Conclusione (Il ritorno)" に至るまで聴き所が満載です。本編終了後には1977年のシングル収録曲2曲がボーナス・トラックとして収録されています。パッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

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