Musicadentro

第101号 (20/03/2009)

ようやく春らしい暖かい日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は今年になってリリースされた新譜(サンレモ関連も含む)を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

NV

Delirium / Il Nome del Vento (2009) Black Widow, BWRCD 113-2. (全11曲) CD-Extra

2006年に再結成された'70年代前半に活躍した Genova 出身のロック・バンド Delirium のオリジナル・アルバムとしては約35年振りとなる最新アルバム。メンバーは前作のライブ盤と同様、Ettore Vigo (p, org, key), Pino Di Santo (ds, perc, vo), Martin Fredrick Grice (fl, sax, key), Roberto Solinas (vo, g), Fabio Chighini (b) の5人編成となっています。雷鳴と雨のSEに導かれたオープニングの "Intro (Dio del silenzio reprise)" でのフルートの流麗な調べで始まり、リード・ヴォーカルに Mimmo Di Martino を迎え、弦楽四重奏を従えテクニカルなサックスが活躍する "Il nome del vento" へと展開していく様がかっこいいです。また、ムーディーなサックスに導かれて始まり、力強いピアノによる畳み掛けるような演奏が印象的な "Verso il naufragio" では Van Der Grraf Generator の "Theme one" のフレーズが飛び出すなど遊び心を感じさせるベテランならではの余裕を見せています。クラシカルなキーボード・オーケストレーションに導かれた "L'acquario delle stelle" では Roberto の渋めのヴォーカルとそれを支えるテクニカルな演奏との対比が印象的です。10分近い大曲の "Dopo il vento" はミステリアスな雰囲気を漂わせたフルートを効果的に用いた導入部から、ジャズのエッセンスを散りばめた軽快なインストへと突入し、叙情的なヴォーカル・パートを挟んで大団円を迎える展開の大きな曲になっています。全体的に歌心溢れるメロディと管楽器を効果的に用いたテクニカルな演奏のバランスのとれたベテランらしい安定感のある作品に仕上がっています。また、CD-Extra 仕様になっており "L'acquario delle stelle" のヴィデオ・クリップが収録されています。パッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

Prova

Chiara Canzian / prova a dire il mio nome (2009) Blu Notte, 88697467452. (全13曲) CD-Text

昨年シングル・デビューを飾った1989年生まれの若手カンタウトリーチェ Chiara Canzian の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むファースト・アルバム。Pooh の Red Canzian と歌手の Delia Gualtiero の娘で、Pooh のアルバム "Ascolta" のジャケット・デザインのモデルだったお嬢さんです。収録曲は全曲彼女自身の作曲で、共作ではあるものの一部の作詞も手掛けています。オープニングのデビュー・シングルだった "Novembre '96" ではモータウン調の軽快なリズムに乗せて多重録音によるコーラスを加えたゴージャスなサウンドをバックに新人とは思えないスケール感ある歌唱を披露しています。今年のサンレモ参加曲 "Prova a dire il mio nome" は叙情的なメロディをしっとりと歌い上げるバラードで、サビで何度も自分の名前を連呼する所が印象的です。哀愁を帯びたメロディを囁きかけるように歌い上げる "Aspetto gli occhi" ではサビでのファルセットを織り交ぜた高音部のヴォーカルが聴き所です。軽快なギターに導かれた "Da Milano al mare" ではアップテンポな曲を軽やかに歌い上げ、色々な曲調に対応した歌唱を披露するなど対応力の広さを感じさせます。ルックスも良く、自作曲もバリエーションに富んでおり、歌もCDを聴く限りかなりうまいと3拍子揃っており、今後の活躍に期待のできる新人アーティストだと思います。

Direzione

Nek / Un'altra direzione (2009) Warner Music Italia, 5051865263920. (全13曲) CD-Text

人気中堅カンタウトーレ Nek の約2年半振りとなるニュー・アルバム。今回も自作曲は共作を含めて半分くらいですが、ほとんどの曲でアコースティック・ギターを中心に演奏にも参加しています。1曲目の "Tira su il volume" では重厚なストリングスをバックにかすかに哀愁を帯びたメロディを抑えの効いた落ち着きのあるヴォーカルで歌い上げています。囁きかけるように始まる "La voglia che non vorrei" では少しかすれた声で切々と歌われるしっとりとしたメロディが印象的です。"Semplici emozioni" では囁くように始まる導入部から一転してロック色の強いサビへと展開し、力強く歌い上げるヴォーカルが疾走感をもたらします。アルバム・タイトル曲の "Un'altra direzione" では落ち着きのある内省的なロック・サウンドに乗せて大人の男の色気を感じさせるほのかな哀愁漂うヴォーカルを聴かせてくれます。軽快なリズムを刻むギターのコード・カッティングをバックに歌われる "Per non morire mai" では哀愁を帯びたメロディと落ち着きを感じさせる抑えの効いた演奏との対比が印象的です。ハードな音色のギターに導かれた "La musica che c'e'" では疾走感のある力強いヴォーカルを聴かせるロック・ナンバーに仕上がっています。アルバム・ラストは Craig David 本人とのデュエットによる "Walking away" のカバーで締め括っています。

Meraviglie

Dolcenera / nel paese delle meraviglie (2009) Sony MUsic, 88697467442. (全12曲)

若手実力派カンタウトリーチェ Dolcenera の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む約3年振りとなる4thアルバム。収録曲は全曲彼女自身の作曲で一部の作詞も手掛けています。また、全編でピアノを担当しており、端正な演奏を聴かせてくれます。オープニングの "La piu' bella canzone d'amore che c'e'" からしっとりとしたメロディを独特のドスの利いたヴォーカルで歌い上げる叙情的なバラードを聴かせてくれます。続くサンレモ参加曲 "Il mio amore unico" は軽快なリズムの上を艶やかなストリングスが切れ込んでくるロック色の強いアップテンポなナンバーで、明らかにサンレモ向きではない曲調が彼女の姿勢を反映しているように感じられます。"Un dolce incantesimo" ではほのかに哀愁を帯びながらもロック色が感じられるメロディを切々と歌い上げています。悲哀を感じさせるピアノ弾き語りのバラード "Chi decide..." では感情を絞り出すようなヴォーカルと包み込むようなストリングスが染み入るような叙情を醸し出しています。端正なピアノの調べに導かれた "Un emozione al giorno" では疾走感のあるロック色の強い演奏をバックに力強いヴォーカルを聴かせてくれます。"...Sei soltano tu" はノリのいいブギで、軽やかなヴォーカルとうねりのあるリズムが一体となったグルーブ感が聴き所です。アルバム・ラストは囁きかけるようなヴォーカルと包み込むようなストリングスが胸を締めつけるような哀愁を醸し出す "Fino a domani" でしっとりと締め括られています。

Buone

Ariadineve / buone vacanze (2009) Artevox, VOX01. (全12曲) CD-Text

2006年に結成された Milano 出身で女性ヴォーカル・フロントのポップ・バンド Ariadineve のファースト・アルバム。メンバーは Eleonora Tosca (Vo), Fabio D'Amico (g), Stefano Campanini (g), Maurizio Fusco (b), Luca Damonte (ds) の5人編成です。曲の大部分は Fabio の手によるもので、一部は Eleonora などとの共作になっています。オープニングの "George" から北欧ポップスを彷彿とさせる爽やかなメロディを軽やかに歌い上げるクールなヴォーカルを聴かせてくれます。続く "Sempre al sole" は弾むようなリズムをバックにメロディアスなヴォーカルを聴かせるヨーロピアン・テイスト溢れる曲です。艶やかなストリングスをバックに叙情的なメロディを切々と歌い上げる "La specchio" では Mauro Ermanno Giovanardi とのムード溢れるデュエットを聴かせてくれます。ミステリアスな雰囲気を持ったメロディをしっとりと歌い上げる "Aria" から畳み掛けるようなリズムをバックに叙情的なヴォーカルを聴かせる "Sentire" への流れは "Melanchoria" 期の Matia Bazar を彷彿とさせる完成度の高いものです。作品全体を通してファッショナブルでありながらも陰影に富んだノスタルジックなメロディが印象的な上質なポップ・ロックに仕上がっていると思います。パッケージにはジュエルケースのトレイ肩の部分にミニチュア鉛筆が組み込まれています。

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