Musicadentro

第112号 (18/07/2010)

週末とともに梅雨も明け、強烈な日差しが照りつけていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの初夏に発売された新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

AnniX

Il Genio / Vivere negli anni 'X (2010) Cramps Music, 8033224410340. (全12曲) CD-Text

2008年にデビューした Gianluca De Rubertis (vo, key, g)  と Alessandra Contini (vo, b) による男女デュオ Il Genio の約1年半振りとなるセカンド・アルバム。今回も大部分の曲は2人による共作となっています。マーチ風のリズムに乗せてカラフルなエレポップを繰り広げる オープニングの "Il genio" から、フレンチポップを意識したかのようなコケティッシュな Alessandra のウィスパー・ヴォイスが堪能できます。続く "Fumo negli occhi" では、艶やかなストリングスをバックに囁きかけるようなヴォーカルがほのかに哀愁漂うメロディを紡ぎ出しています。うねるようなベースに導かれた "Cosa dubiti" では、Gianluca の低音ヴォイスとコケティッシュな Alessandra のヴォーカルの対比が生み出す Serge Gainsbourg 風の世界観が印象的です。'60年代のフレンチポップを想わせる軽やかなメロディを持った "Tu mi dai dire" や'80年代の Lio に代表されるようなエレポップ・サウンドを聴かせる "Tahiti Tahiti"、Alessandra の奏でるベースに乗せて2人のヴォーカルが絡み合う "Non avrai" など、イタリアでは他に見られないファッショナブルな音楽性は一聴の価値があります。

Versione

Diana Tejera / "la mia versione" (2010) Sunnybit, CDSUNNY0004. (全12曲) CD-Text

2000年代初頭に2枚のアルバムを発表したポップ・バンド Plastico の中心メンバーだったカンタウトリーチェ Diana Tejera のソロとしてのファースト・アルバム。共作を含め大部分の曲の作詞・作曲を手掛け、アコースティック・ギターを中心に演奏も自身で行なっています。 リヴァーヴのかかったウーリッツァーの弾き語りによるオープニングの "Scollati le ciglia" では、深く沈み込むようなメロディを囁きかけるような気怠いヴォーカルを聴かせてくれます。続く、Tiziano Ferro が曲を提供している "Scivoli di nuovo" では、端正なピアノをバックに切々と訴えかけるような歌声をストリングスがしっとりと盛り上げています。先行シングルとなった "Degni di esistere" では哀愁漂うメロディを切なさを絞り出すようなヴォーカルで歌い上げています。Valeria Rossi との共作となる "Ma una vita no" ではジャズの要素を取り入れ、物憂げな歌声を聴かせてくれます。Barbara Eramo が曲を提供した "Black out" では Barbara がヴォーカルでも参加し、息のあったデュエットを聴かせてくれます。Plastico 時代とは異なった大人の女性を感じさせる良質のポップ・アルバムに仕上がっていると思います。初回盤のパッケージはスリット・イン・タイプのデジパック・ サイズの見開き紙ジャケ仕様となっています。

Ptah

Phaedra / Ptah (2010) Claudio Bonvecchio, PHM01. (全14曲) CD-Text

1993年から活動を続けるシンフォニック・ロック・バンド Phaedra の満を持して発表されたファースト・アルバム。メンバーは Stefano Gasperetti (g, p, key), Claudio Bonvecchio (b, g, vo), Matteo Armellini (ds),  Claudio Granatiero (vo), Fabrizio Crivellari (fl), Elisabetta Wolf (vln), Antonio Floris (vln) の7人編成です。本作はエジプトの創造神 Ptah をテーマに14のパートからなる壮大なロック・オペラを繰り広げています。アコースティック・ギターのつま弾きに導かれてチェンバロやフルートが絡み合う バロック調のオープニングの "Overture" をはじめ、ハイトーン・ヴォーカルに導かれて始まり、曲調が目まぐるしく展開していく3部構成の "Il cielo stellato" など冒頭の数曲は典雅なクラシカル・ロックを展開しています。中盤の3部構成となる "Il reietto" やフルートがリードを取る "Un mondo nuovo "から次第に曲調が疾走し始め、ドイツの Eden を思わせるカラフルなシンフォニック・ロックへと突き進んでいきます。3部構成の "Il saggio errante" からは起伏の激しい展開や畳みかけるような演奏により、イタリア独特のヘヴィ・シンフォニックの様相を呈してきます。 フルートやバイオリンがリードを取るクラシカルなインスト曲を挟みつつ、大きな展開を聴かせる大曲を要所に配するなど、 75分を超える大作を飽きさせずに聴かせる構成力はファースト・アルバムとは思えないほどの完成度です。

Itinerario

Fabio Abate / itinerario precario (2010) Narciso Records, NRCD003. (全8曲) 

Carmen Consoli と親交のある Catania 出身のカンタウトーレ/マルチプレーヤー Fabio Abate のソロ・デビュー・アルバム。全曲彼自身の作詞・作曲で、ギターを中心にブズーキやピアノなども演奏しています。ブズーキの響きに導かれたオープニングの "Precario" では地中海トラッドからの影響を感じさせる土着的なフォーク・ロックを聴かせてくれます。続く、囁きかけるように始まる "Davanti a te" でも南欧トラッドのリズムに乗せてシアトリカルなヴォーカルを聴かせてくれます。"Povero Pagliaccio" では軽快な3拍子のリズムをバックに軽やかな歌声を披露しています。Carmen Consoli がベースやギターで参加している "La bestia che c'e' in noi" では、フェリーニの映画音楽を想わせるほのかな哀愁を感じさせるメロディを囁きかけるようなヴォーカルで聴かせてくれます。 ギターの爪弾きをバックに切々と歌い上げる "Guapo" ではCarmen Consoli がベースを弾いています。ゆったりとしたワルツを想わせるアルバムラストの "Senza farsi male" では Carmen Consoli がエレキギターで参加しています。シチリア出身らしい多様な音楽性を持ったカンタウトーレ作品に仕上がっていると思います。 初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。

Memoria

Barbara Monte / Mare senza memoria (2010) CMP, 0205609CUP. (全6曲) CD-Extra

2008年に Barbara 名義でファースト・アルバムをリリースした Barbara Montecucco が Barbara Monte 名義でリリースしたミニ・アルバム。とは言っても全6曲の内、Barbara 名義で発表した前作 "Dai fuoco ai miei papaveri" 収録曲が3曲再録されていて、新曲は3曲だけなのでEP扱いのようです。艶やかな音色のバイオリンに導かれて始まるオープニングのタイトル曲 "Mare senza memoria" から起伏の激しいドラマティックなメロディをしっとりとしたヴォーカルで聴かせてくれます。"Il primo giorno senza te" では自身の奏でるバイオリンが大々的にフィーチャーされ、ロック色の強いダイナミックな歌声を聴くことが出来ます。アルバム・ラストとなる "Oltre il limite" では軽快なギター・サウンドに乗せて Laura Pausini を想わせる王道のイタリアン・ポップスを聴かせてくれます。再録の3曲もロック色の強いアップテンポの "L'essenza" やドラマティックなヴォーカルを聴かせる "L'uomo aquila"、しっとりとした序盤から一気に盛り上がる "Sono" と粒ぞろいです。ボーナスとしてジャケット・デザインその ままの世界を再現したタイトル曲 "Mare senza memoria" のビデオ・クリップが収録されています。

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