Musicadentro

第113号 (05/09/2010)

既に9月だというのに相変わらず熱帯夜が続き、昼間も強烈な日差しが照りつけていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの夏に発売された新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Dimentichero'

Collage / ...non ti dimentichero' LIVE CONCERT (2010) Collage, 018. (全30曲) CD-Text

'70年代半ばから活動を続けるベテラン・ラブロック・グループ Collage のバンド史上初となる2枚組ライブ・アルバム。ライブのメンバーは Tore Fazzi (vo), Piero Fazzi (vo, g), Mario Chessa (key, vln), Federico Fazzi (b), Nicolino D'Alessio (g), Davide Moscatiello (ds, per) の6人編成です。冒頭のアルバム・タイトル曲 "Non ti dimentichero'" はスタジオ録音の新曲で、彼ら独特の柔らかいヴォーカルと美しいコーラス・ハーモニーを生かした叙情的な佳曲です。ライブ本編のオープニングの軽やかなリ ズムに乗せた "Paola e un cielo pieno di stelle" と、続いてプッシュホンの操作音で始まる "Quando non sorridi" はオリジナルの最新作 "Abitudini e no" (2003) からの曲で、現役バンドとしての自負が感じられます。Fazzi 兄弟のヴォーカルの掛け合いが印象的な "Saprei darti un'anima" や美しいコーラス・ハーモニーが染み入るような哀愁を漂わせる "Tu mi rubi l'anima"、リズミカルなライブならではのアレンジを施された "Sole rosso" など新旧取り混ぜた代表曲を立て続けに演奏しています。また、ライブ後半ではバイオリンが活躍するポップな "A rositedda" や "I ragazzi che si amano" から始まるアコースティック・セットでのメドレー、去りゆく夏に想いを馳せるかのような哀愁漂うメロディが印象的な "Un'altra estate" など聴き所が満載です。アルバムの最後には叙情的なメロディをシンフォニックなアレンジで聴かせる "Concerto d'amore" の2000年バージョンがボーナスとして収録されています。パッケージは3面開きの箔押し仕様のデジパックとなっています。また、今回は一般流通に載って おり、彼らのサイト以外のオンライン・ショップでも取り扱いがあるので、 比較的入手が容易になっています。

DCS

Jessica Brando / Dimmi cosa sogni (2010) EMI Music Italy, 5099964810621. (全10曲)

今年のサンレモ音楽祭の Nuova Generazione 部門に出場した 1994年生まれの超若手女性ヴォーカリスト Jessica Brando のフル・アルバムとしては初となるセカンド・アルバム。端正なピアノに導かれたオープニングの "Il colore del cuore" から年齢に似合わず落ち着いた歌声を聴かせてくれます。続くタイトル曲の "Dimmi cosa sogni" ではノスタルジックな雰囲気の漂うメロディを大人の色香を感じさせるヴォーカルで歌い上げています。哀愁を感じさせるメロディをアンニュイなヴォーカルで 紡ぎ出す "Un ragazzo come tanti" や Andrea Bocelli がゲスト・ヴォーカルで参加した "Ricordati 、Valeria Rossi の作詞作曲でサンレモ音楽祭参加曲のしっとりとしたバラード "Dove non ci sono ore" など、アイドル然とした外見に似合わず本格派の楽曲が並びます。気怠いヴォーカルで突き放すように歌い上げる "Lacrime e rose" や囁きかけるように甘い歌声を聴かせる "Fare piano"、グルーブ感のあるヴォーカルが印象的なロック色の強い "Tu vuoi quello che non hai" など幅広いヴォーカル・スタイルも難なくこなし、ヴォーカリストとしての潜在能力の高さを感じさせてくれます。初回盤のパッケージはデジパックサイズの見 開き紙ジャケット仕様となっています。

CiCrediTu

Annica / Ci credi tu (2010) Joe & Joe, 3000336. (全11曲) CD-Text

1982年生まれで Brescia 近郊出身の若手女性ヴォーカリスト Annica こと Annica Festa のファースト・アルバム。ほぼ半数の曲で作曲に名を連ねているので、カンタウトリーチェと言った方がいいかも知れません。オープニングの "Un nodo del cuore" ではピアノを主体としたシンプルな演奏をバックに、ロック色の強い伸びのあるヴォーカルを聴かせてくれます。続く端正な ピアノに導かれて始まる "Un brivido speciale" では、囁きかけるような序盤から徐々に盛り上がっていき、サビでは張りのあるヴォーカルで高らかに歌い上げるダイナミックな展開を聴かせてくれます。 叙情的なメロディを切々と歌い上げる "Due gocce" や ムーディーなサックスによるオブリガートを従えたジャズ色にあるタイトル曲の "Ci credi tu"、哀愁漂うメロディをしっとりと歌い上げる "Nel mio mondo" など曲調も幅広く、ヴォーカリストとしての対応力の広さも感じられます。また、ピアノをバックに緩急をつけたヴォーカルでダイナミックに歌い上げるバラー ド "Fino in fondo al cuore" やイタリアン・ポップスの王道とでも言うような叙情的なメロディを高らかに歌い上げる "Grazie"、狂おしいような情念を感じさせるヴォーカルを聴かせる "Amami" など純粋に歌そのものを楽しめる実力を持っているようなので、今後の活躍が楽しみなアーティストです。

Progfiles

Le Orme / "Progfiles" Live in Rome Official Bootleg (2010) Sonny Boy, SBM004. (全10曲) CD-Text

イタリアを代表するベテラン・プログレ・バンド Orme の最新ライブ・アルバム。バンドの中心人物 Aldo Tagliapietra (vo, b) が脱退した後の新体制で5月21日に Roma で行なわれた最新ライブを収録しています。メンバーは Michi Dei Rossi (ds), Michele Bon (key, cho) の残留組に Fabio Trentini (b, ac-g, cho) を正式メンバーに加え、元 Metamorfosi の Jimmy Spitaleri (vo) をゲスト・ヴォーカルとして迎え、William Dotto (g) と Federico Gava (p, key) をサポート・メンバーとした6人編成となっています。キーボード・オーケストレーションによる "Intro" に引き続いて、Jimmy Spitaleri のダイナミックなヴォーカルが盛り上げる "Chiesa d'asfalto"、唸りを上げる攻撃的なオルガンが印象的な "Danza del fuoco"、壮大なキーボード群とギター・シュミレーターとが繰り出すシンフォニックな "L'infinito" といった近作からの曲が続きます。また、ライブの中盤以降は前衛色も感じさせるテクニカルな "Maggio" やオルガンが暴れ回る "Vedi Amsterdam"、ELPを想わせる攻撃的なオルガン・サウンドが印象的な "Sguardo verso il cielo" など'70年代の名曲が繰り広げられます。さらに初期のレパートリーで Nice で有名な "Rondo'" を取り上げているのも興味深いです。最後は現在のスタイルを確立したクラシカルな "Collage" で締めくくっています。よく言えば味のあるヴォーカルであった前任者 (Aldo) と較べると圧倒的な歌唱力を誇る Jimmy が加わったことにより、ある意味非常に安定感のあるステージになっていると思います。

Insicurezza

Valeria Vaglio / Uscita di insicurezza (2010) Frog Music, 8034125840199. (全7曲)

1980年生まれで Bari 出身のの若手カンタウトリーチェ Valeria Vaglio のセカンド・ミニ・アルバム。今回はほぼ全曲、彼女自身の作詞作曲で、ピアノの演奏も自分で行なっています。オープニングのしっとりとしたバラード "Cambiera'" では落ち着きのある歌声で囁きかけるような序盤から一気に駆け上がるように歌い上げるダイナミックなヴォーカルを聴かせてくれます。続く "L'amore puo' finire" では切なさを感じさせるメロディを哀しみを湛えたようなヴォーカルで歌い上げています。内省的なロック・サウンドに乗せて切々と歌い上げる "Dio quanto sto bene senza te" や 端正なピアノの弾き語りでしっとりとしたヴォーカルを聴かせる "Quasi quasi"、軽やかなリズムに乗せて早口で歌われる "Fragole e champagne" など曲のバリエーションも豊富で飽きさせません。ラストは囁きかけるように哀愁のあるメロディを紡ぎ出すしっとりとした "Ti amo per sempre" で締めくくっています。全体的に地味ながらも味わい深い作品に仕上がっていると思います。

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