Musicadentro

第123号 (14/10/2012)

気温の寒暖の差が段々激しくなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの秋に発売された Pooh をはじめとしたアーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Pooh / Opera seconda (2012) Trio, 8033954531926. (全11曲)

イタリアの国民的ロック・バンド Pooh の2年振りとなるニュー・アルバム。今回はオーケストラとの共演によるセルフ・カバー・アルバムとなっています。サポートのドラムはライブでもお馴染の Phil Mer、オーケストラ・アレンジは Danilo Ballo が担当し、Fabio Gurian 指揮による67人編成のオーケストラをバックに、1976年の "Poohlover" から 1992年の "Il cielo e' blu sopra le nuvole" までのアルバムから選曲された珠玉のシンフォニックなアレンジによって生まれ変わらせた、ドラマティックで壮大な作品となっています。オープニングの "Sara nel sole" (Rotolando Respirando 収録) や "E' bello riaverti" (シングルB面曲)、"Quaderno di donna" (Boomerang 収録) といったこれまでライブなどでもほとんど取り上げられなかった隠れた名曲に新たな息吹を吹き込んでいます。ライブ定番曲も多数取り上げられ、特に最近のラ イブ・アレンジに大胆にオーケストラを取り入れた "Cantero' per te" や 7分以上に拡大された "Chi fermera' la musica" などポップな楽曲をもシンフォニックに仕上げる手腕に感心します。また、"Maria marea" でのしゃがれた Claudio Baglioni と Red による掛け合いや "Ci pensero' domani" における渋い歌声の Mario Biondi と甘いヴォーカルの Dodi との対比など2曲のデュエット曲も魅力的です。ラストは重厚なアレンジによる "Il ragazzo del cielo (Lindbergh)" で締め括っています。初回盤のパッケージは特殊紙を使ったデジパック・サイズの見開き紙製ジャケット仕様となっています。
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Alice / Samsara (2012) Arecibo, 0196263. (全13曲) CD-Text

ベテラン女性ヴォーカリスト Alice の21世紀になって初めてのオリジナル・アルバム。長い間活動を供にしている元 Japan のSteve Jansen (dr, key) と Francesco Messina (key) が今作でもバックを支えています。今回は自作曲は共作を含めて2曲のみで、カバー曲も3曲収録されています。オープニングを飾る "Morire d'amore" からややアンビエントな響きを湛えた演奏をバックに彼女独特の中低音を生かした落ち着きのあるヴォーカルを堪能できます。続く Tiziano Ferro に提供された "Nata ieri" は先行シングルになった曲で、高音域と低音域を使い分けた多重録音のコーラスが荘厳な雰囲気を醸し出す優美な曲に仕上がっています。自作曲の "Orientamento" では若かりし頃を想わせる中低音域のヴォーカルを前面に押し出した朗々とした歌唱を楽しめます。Franco Battiato に提供された如何にもと言ったクールな曲調の "Eri con me" や 静謐な演奏をバックにしっとりと歌い上げる "Un mondo a parte"、Mino Di Martino とのデュエットによる "Come il mare" など彼女の歌声を堪能できる楽曲で占められています。また、Lucio Dalla の"Il cielo" や、前回のライブ盤でも取り上げていた Giuni Russo の "'A cchiu' bella" のスタジオ録音バージョン、さらには I Califfi のヒット曲 "Al mattino" もギターによるバッキングのみのシンプルなアレンジでカバーしています。 なお、初回盤のパッケージはデジパック・サイズの3面開き紙製ジャケット仕様となっています。

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Nomadi / Terzo tempo (2012) Nomadi, 8032732272327. (全10曲) CD-Text

結成からすでに45年を超えるベテラン・ロック・バンド Nomadi の約1年半振りの最新アルバム。今回は昨年健康上の理由で脱退した Danilo Sacco (vo, g) に替わり、3代目ヴォーカリスト Cristiano Turato (vo, g) を迎えての1作目となります。メンバーは Beppe Carletti (key), Cico Falzone (g), Daniele Campani (ds), Massimo Vecchi (b, vo), Sergio Reggioli (perc, vln, vo) の1999年以来不動のラインアップに前述の Cristiano を加えた6人となっています。オープニングの "Non avrai" から前任者と声質が大きく違わない Cristiano のヴォーカルが違和感なくバンドに溶け込み、よりロック色を強めたサウンドがバンドの若返りを表しています。続く "Ancora ci sei" は彼らには珍しくコーラスを多用した爽やかなロック・ナンバーに仕上がっています。オルガンによる印象的なイントロに導かれて力強いヴォーカルを聴かせる "Fuori" やシンフォニックなキーボードをバックに朗々と歌い上げるタイトル曲の "Terzo tempo"、 これまでなら Massimo がリードを執っていたであろう曲調の "Un altro cielo" など新加入の Cristiano の声質を生かした楽曲が並びます。優美なバイオリンに導かれた叙情的な "Tarassaco" や女性コーラスを伴ったドラマティックな "Il vento tra le mani"、端正なピアノに導かれてドラマティックに歌い上げる "Apparenze" など彼らの定番の要素を盛り込んだ楽曲も収録され、2000年以降特徴的だった地中海色はやや後退したものの、新生 Nomadi の第一歩として完成度の高い作品に仕上がっています。
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Marina Rei / La conseguenza naturale dell'errore (2012) Perenne, 370 543 8. (全8曲) CD-Text

すでに10年以上の活動歴を誇るパーカッション奏者でもあるカンタウトリーチェ Marina Rei のオリジナルとしては約3年振りとなる最新アルバム。今回も共作を含めてほぼ全曲彼女自身のペンによる曲で埋め尽くされ、 ほとんどの曲でドラム/パーカッションも自身で演奏しています。1曲目の "L'errore" ではリズミカルなバッキングを従えて軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。Pierpaolo Capovilla をゲストに迎えた "E mi parli di te" はしっとりとした彼女のヴォーカルと渋めの Pierpaolo の歌声の対比が印象的なデュエット曲に仕上がっています。6分を超える "Qui e' dentro" は語りに近いパートと切々と歌い上げるパートが交互に現れ、後半での Valerio Mastandrea (vo) との掛け合いや長尺のインスト・パートを盛り込んだアーティスティックな1曲です。ピアノをパックに切々と歌いかける "Nei fiori infranti" では Paolo Benvegnu' によるコーラスが叙情的な曲を盛り上げています。Riccardo Sinigallia が提供した "Che male c'e'" ではピアノを中心としたシンプルな演奏をバックに情感豊かな彼女のヴォーカルが冴え渡ります。また、"Mani Sporche" では曲・演奏ともに Bud Spencer Blues Explosion (BSBE) を迎えてロック色の強い演奏を繰り広げています。ラストは "Che male c'e'" のオーケストラをバックにしたバージョンでしっとりと締め括っています。

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Francesco Zampaglione / un uomo e... (2012) Bideri, 13083775026. (全10曲) CD-Text

今では実兄 Federico Zampaglione のソロ・プロジェクトとなってしまった Tiromancino がバンド編成だった頃の主要メンバーだった Francesco Zampaglione のファースト・ソロ・アルバム。共作を含め全曲自身による作詞・作曲で、 ほとんど全てのパートを自身で演奏した多重録音によりマルチ・プレーヤー振りを発揮しています。 オープニングの "Non per l'eternita' (Lettera di un kamikaze)"  から近年の Tiromancino を想わせる音響系のロック・サウンドをバックにくぐもったヴォーカルを聴かせてくれます。続くタイトル曲の "Un uomo e..." では淡々とリズムを刻むピアノとアンビエントな響きを湛えたギターをバックに囁きかけるような歌声が印象的です。 また、アバンギャルド色の強いインスト・ナンバー "Menelik tongue" やフォークロック調の "Cara Maria"、Tiromancino 時代の同僚 Riccardo Sinigallia が詞を共作している残響音を生かした "Al campo nomadi" など、曲調のバリエーションも意外に広いのも特徴です。ラストは音響系の面目躍如となる静謐な "Glasspiel" とスペーシーな "Dub in the house" のインスト2曲で締め括っています。なお、初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。


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