Musicadentro

第125号 (20/03/2013)

ようやく暖かい日々が続き、春らしい陽気になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は昨年末〜今年の冬に発売されたアーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Baustelle / Fantasma (2013) Atlantic, 5053105572526. (全19曲) CD-Text

2000年にデビューした中堅バンド Baustelle の約3年振りのニュー・アルバム。オリジナルとしては6作目となります。メンバーは4thアルバム以降不動の Rachele Bastreghi (vo, p, org), Francesco Bianconi (vo, g, key), Claudio Brasini (g), の3人に多数のゲストを迎えて制作されています。少女の歌声に導かれて始まるオープニングの "Fantasma (Titoli di testa)" に始まり、Francesco のジェントリーなヴォーカルが叙情的なメロディを奏でる "Nessuno" へと続くように、アルバム全体を通じて1つのストーリーが展開するようなトータル・アルバムを想わせる構成になっています。シャッフルのリズムに乗せて Francesco が軽やかに歌いあげる "La morte" や、哀愁漂う叙情的なメロディをしっとりと聴かせる "Diorama"、きらびやかな音色のキーボードをバックに Rachele が美声を聴かせる壮大なバラード "Monumentale" など、個々の楽曲の完成度も高く、壮大で重厚な歌物として楽しめます。また、ボレロのリズムに乗せて2人のヴォーカルが絡み合う "Il finale" や、オーケストラを導入してマカロニ・ウェスタン風のサウンドを聴かせる "Cristina"、静謐な音空間を Rachele の幻想的なヴォーカルが漂う "Radioattivita'" など多彩な音楽性を楽しむことができます。彼らのこれまでの作品の中でも傑出した作品となっており、名盤と言っていいと思います。
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La Leggenda New Trolls con Luis Bacalov / Concerto Grosso nº3 (2013) Immaginifica, ARS/IMM 1014. (全13曲) CD-Text

New Trolls のオリジナル・メンバー5人の内、Vittorio De Scalzi (p, fl, key, vo), Nico Di Palo (key, vo, g), Gianni Belleno (ds, cho, vo), Giorgio D'Adamo (b) の4人が集結し、La storia dei New Trolls でも活躍した Andrea Maddalone (g, cho), Francesco Bellia (cho) をサポートに迎えた La Leggenda New Trolls のファースト&ラスト・アルバム。Concerto Grosso シリーズの続編として Luis Bacalov を迎え、Orchestra del Teatro Carlo Felice との共演盤となっています。オープニングの "The mythical city" に始まる前半は Bacalov 作曲による艶やかなストリングスとバンド演奏が渾然一体となったクラシカル・シンフォニック・ロックの Concerto Grosso の続編で、Nico が'96年に録音したギターが聴ける間奏曲 "My guitar from the heart" も組み込まれています。また、後半は引き続きオーケストラをフィーチャーした華麗なアレンジによるしっとりとしたヴォーカルを堪能できる歌物で、 トランペットの哀愁漂う響きが印象的な "Per chi combatte per noi" や、テノール歌手の Mattia Pelosi を迎えた "Per lui" など聴き所満載です。録音自体は2011年に行なわれ、同6月には Teatro Carlo Felice でお披露目公演も行なわれたのですが、その後バンド本体が空中分解してしまい、紆余曲折の末ようやく発売に漕ぎ着けた不遇の作品です。 初回盤のパッケージは3面開きのデジパックサイズの紙製ジャケット仕様となっています。
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UT New Trolls / Do Ut Des (2013) Immaginifica, ARS/IMM 1012. (全10曲) CD-Text

諸般の事情により空中分解してしまった La Leggenda New Trolls を受けて、Gianni Belleno (ds, vo) と Maurizio Salvi (key, p, org) が中心となってハード・ロック版 New Trolls を復活させた UT New Trolls のオリジナル・アルバムとしては1作目となるセカンド・アルバム。 メンバーは他に Alessandro Del Vecchio (key p, vo), Claudio Cinquegrana (g), Anna Portalupi (b) の3人で、昨年4月の来日公演の時とはキーボードとベースが交代しています。ハード・エッジなギターによる前奏曲 "Paganini" で始まり、クラシカルなオルガンを全面的にフィーチャーした "Per ogni lacrima" へと続くオープニングからクラシカルなハード・ロックが全開で期待が高まります。畳みかけるような Gianni のドラムの上をギターやオルガンが唸りを上げる "La luce di vermeer" や、端正なピアノをバックにしっとりと歌い上げるシンフォニックなバラード "Oltre il cielo"、円舞曲のような華麗なインスト・パートと叙情的なヴォーカル・パートが交錯するタイトル曲 "Do ut des" など、ベテランらしい引き出しの多さを感じさせます。また、華麗なコーラスが堪能できる "Sara' per noi" や'80年代のポップス期を彷彿とさせる "Sporca politica" など歌物としての完成度も高いです。ラストの "Can't go on" では TOTO などで活躍した Fergie Frederikson をゲストに迎え、彼のしっとりとしたヴォーカルを生かした壮大なバラードで締め括っています。
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Nagaila / Viaggio di Ritorno (2012) Ulula Records, NAG03. (全9曲)

1996年にデビューした寡作で知られる中堅カンタウトリーチェ Nagaila のライブDVDを挟んでオリジナルとしては5年振りとなるサード・アルバム。カバー曲を除いて彼女自身が全て作詞・作曲しており、演奏も彼女のピアノと Fidel Fogaroli (key, b, p), Matteo Milesi (ds, perc) の3人で行なっています。オープニングの "Microbo" から 幾分アバンギャルドなアレンジによる楽曲を Kate Bush の影響を感じさせるコケティッシュでシアトリカルなヴォーカルで聴かせてくれます。 アンビエントな響きを湛えた曲の上をエキセントリックなヴォーカルが駆け回る "Nel posto segreto" や、コケティッシュなヴォーカルでしっとりと歌い上げる幻想的な "Notte blu"、ピアノの弾き語りによるシアトリカルなヴォーカルを堪能できる "Mal d'Africa" など曲調も幅広く、飽きの来ない構成になっています。カバー曲のスタンダード・ナンバー "My favorite things" はライブ・バージョンで、アバンギャルドなアレンジに乗せてシアトリカルなヴォーカルを聴かせてくれます。また、ラストの "Il seso crea" は9分にも及ぶ大作で、ピアノの弾き語りによるしっとりとしたヴォーカルの後に静寂が訪れ、 後半は少女による鼻歌が延々と続くという不思議な楽曲になっています。

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Diorama / laltrove (2012) E-edizioni, EE02-I2. (全7曲) CD-Text

2003年に結成され、2005年にアルバム・デビューした女性ヴォーカル・フロントのポップ・バンド Diorama の3年振りとなるサード・ミニ・アルバム。メンバーは Antonella Colucci (vo), Riccardo Rodio (g), Nicola Farina (b), Giovanni Francioso (vln), Francesco Sozzi (p, key), Giuseppe Tanzarella  (g), Guido Vincenti (ds) の7人編成で、前作からギタリストが1人交代しています。カバー曲以外の全ての曲を作詞 Antonella、作曲 Riccardo のコンビが書いています。軽快なギターのコード・カッティングに乗せてアンニュイなヴォーカルを聴かせるオープニングの "L'illusione" に始まり、ファルセットを多用してエキセントリックな歌声を聴かせるロック色の強い Ivan Graziani のカバー曲 "Mona Lisa" や、囁きかけるように歌われる叙情的な "Nata di notte" など、曲毎に表情を変える Antonella のヴォーカルが魅力的です。軽快なリズムに乗せてジャズのイディオムを取り込んだヴォーカルを聴かせる "Ora blu" や、シャッフルのリズムをバックに軽やかな歌声が楽しめる "Allora si puo'" など、短いながらも前作にも増してカラフルな音楽性が楽しめる作品となっています。

 
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