Musicadentro

第135号 (15/02/2015)

まだまだ寒い日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの年明けにリリースされた新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Tornare.jpg

Carmen Consoli / L'abitudine di tornare (2015) Polydor, 0602547173928 (全10曲) CD+DVD

ロック系中堅カンタウトリーチェ Carmen Consoli の最新スタジオ・アルバム。初期の内省的なロック・サウンドに較べるとカラフルなポップス寄りの作風に変化しています。共作を含め全曲自身で作詞・作曲を 行なっており、演奏面でもギターやベースを全編で担当しています。軽快なギターに乗せてくねるようなヴォーカルが印象的なオープニングのタイトル曲 "L'abitudine di tornare" に始まり、自身による多重コーラスをフィーチャーしたしっとりとしたバラード "Ottobre" へと繋がるアルバム導入部から引き込まれます。ブラス・セクションを従え囁きかけるように歌われる "Esercito silente" やエレクトリック・サウンドとストリングスを対比させた "Sintonia imperfetta" など、多彩なアレンジで彼女のヴォーカルを引き立たせているのが印象的です。また、ハードなロック・サウンドを繰り広げる "La signora del quinto piano" やシンプルなフォーク・ロックから転調していく "E forse un giorno" 、レゲエのリズムをバックに語りに近いヴォーカルを披露する "La notte più lunga" など曲調も多彩で最後まで飽きの来ない構成になっています。ラストは胸を締め付けるようなヴォーカルが印象的なバラード "Questa piccola magia" で締め括っています。初回盤のパッケージは三面開きのデジパック仕様となっています。
Marie.jpg

Rachele Bastreghi / Marie (2015) Atlantic, 5054196497828. (全7曲) CD-Text

2000年にデビューした中堅バンド Baustelle のキーボーディスト Rachele Bastreghi のファースト・ミニ・アルバム。'70年代のイタリアン・ポップスを意識した作品となっています。2曲のカバーを除き、 全曲共作を含め自身で作詞・作曲を行なっており、各種キーボードも自身で演奏しています。足音から始まるオープニングの "Senza essere" から幻想的なキーボード・オーケストレーションと彼女の憂いを帯びたヴォーカルが一体となった郷愁のあるレトロ感たっぷりのサウンドが堪能できます。続く "Folle tempesta" では Baustelle でもお馴染のサスペンス映画のサントラを思わせるミステリアスでスリリングな演奏による緊迫感のあるサウンドが楽しめます。Patty Pravo のカバー "All'inferno insieme a te" では Mauro Pagani のフルートをフィーチャーし、ヨーロッパのデカダンを感じさせる神秘的なアレンジで聴かせます。しっとりとしたバラードの "Mon petit ami du passé" や "Il ritorno"、Equipe 84 のカバー "Cominciava così" でも存在感のあるミステリアスなキーボード・アレンジが施され、彼女独自の世界観が構築されています。ラストはより彼女の特性を感じることができる "Folle tempesta" のインスト・バージョンが収録されています。初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。
Forte.jpg

Alessandro Grazian / L'età più forte (2015) Lavorarestanca, LS15006-01. (全10曲) CD-Text

1977年 Padova 生まれの中堅カンタウトーレ Alessandro Grazian の約2年振りとなる最新アルバム。全曲彼自身の作詞・作曲で、演奏面でもギターやベースなどを自身で担当しています。短いイントロとなるタイトル曲 "L'età più forte" に続き、囁きかけるように歌われる内省的なロック・サウンドが印象的な "Satana" など、以前の低音域を生かしたアコースティックなサウンドからロック寄りの作風へと移行しています。畳みかけるようなリズムに乗せてシャウトする "Lasciarti scegliere" や重厚なロック・バラード "Corso San Gottardo"、早口のヴォーカルで畳みかけるように歌われる'60年代ポップス風の "La risposta" など曲調も多彩で飽きさせません。しっとりと語りかけるようなヴォーカルが印象的な "Anastasia" ではギター・ソロも披露し、"La meglio volgarità" では低音部を支えるバリトン・サックスが初期のサウンドを思い起こさせます。自身が弾くうなるようなベースが活躍する "Se io fossi una band mi scioglierei" やアコースティック・ギターのコード・カッティングに乗せて軽やかに歌われる "Quasi come me" など新旧のイメージを交錯させてアルバムに彩りを添えています。10曲で30分強という最近では珍しい収録時間の短さですが、 内容はかなり充実しています。
Manuale.jpg

Levante / Manuale distruzione (2014) Inri, 8033954533425. (全12曲) CD-Text

1987年生まれの若手女性ヴォーカ リスト Levante (本名 Claudia Lagona) のファースト・フル・アルバム。ギターのコード・カッティングに乗せて Kate Bush を思わせる少しエキセントリックなヴォーカルを聴かせるオープニングの "Non stai bene" に始まり、続く "Cuori d'artificio" ではせき立てるようなギターのリフをバックに変幻自在のヴォーカルで魅せてくれます。エレポップ調のイントロに導かれ軽やかなヴォーカルを聴かせる "Memo"  や力強いギターのコード・カッティングをバックにしっとりと歌い上げる "Le margherite sono salve"、オールディーズ風の軽快な歌声が印象的な "Sbadiglio" など多彩なアレンジが施された楽曲が続きます。フォーク・ロック調の "Nuvola" でのしなやかなヴォーカル・ラインやボサノヴァ調の "Alfonso" での口ずさむような歌声などヴォーカリストとしての幅広い対応力が魅力的です。 重厚な響きを湛えたピアノの伴奏に乗せて切々と訴えかけるように歌われるバラード "Senza zucchero" やシングルとしてリリースされた "Duri come me" のような軽快なポップスもこなす実力派ヴォーカリストと言えるでしょう。ラストはこれもシングルとしてリリースされた "La scatola blu" でしっとりと締め括っています。初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。

Laila.jpg

Deja / Laila (2010) Acoustic Music Records, Best._Nr. 319.1447.2. (全11曲)

前回紹介した Serena Finatti が'90年代後半から Andrea Varnier (g) と組んで活動していたユ ニット Deja の現時点での最新(最終?)アルバム。ほとんどの曲は Serena Finatti が作詞・作曲をしています。 アコーディオンの調べに乗せて始まるオープニングのタイトル曲 "Laila" から Andrea Varnier のギターの爪弾きと Serena Finatti の可憐な歌声によるアンビエント・ジャズ路線のシンプルながら幻想的なサウンドを堪能できます。続く "Di te dei no non so" でも一人多重コーラスを多用した Serena らしいヴォーカル・アレンジでシンプルなサウンドに華を添えています。 教会音楽を思わせる一人多重コーラスが印象的な荘厳な "Lenzuolata" やギターの爪弾きをバックにしっとりと歌い上げる "Senza"、Andrea のアコースティック・ギターによるインスト曲 "Mathair" など静的なイメージの曲が多いながらも曲調に幅を持たせ聴きやすい作品になっています。"Il gioco" のように後のソロ・アルバムにも通じる変幻自在なヴォーカルを披露する曲や、Andrea 作曲のインスト曲 "Expériences sur le mouvement perpétuel" のように後に個々の活動に移行していくのを予兆させる部分が見え隠れするのは今となってはご愛敬でしょうか。初回盤のパッケージはデジパック仕様となって います。

 
ご意見ご感想などあれば以下にご連絡ください。

ただし、メール・アドレスは画像になっていますのでご了承下さい。

音楽の部屋に戻る

ホームに戻る