Musicadentro

第61号 (07/12/2003)

いよいよ寒さも増して本格的に冬になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの秋にリリースされたベテラン・アーティストのライブ・アルバム2種を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Palco

Banco del Mutuo Soccorso / No Palco (diecimilanovecentocinquantasettegiornidiVersi) (2003) Sony Music, SAS 5135072. (全13曲) [CD-Text]

ベテラン・プログレ・バンド Banco のイタリア国内では久しぶりのリリースとなる新譜は2002年7月6日に Roma 郊外にある Ippodromo delle Capannelle で行なわれたデビュー30周年の記念コンサートの模様を収録したライブ・アルバムとなりました。オリジナル・ドラマーの Pierluigi Calderoni や久々に合流した Gianni Nocenzi に加え、Tiromancino の Federico Zampaglione や Bluvertigo の Morgan、さらに Mauro Pagani などのゲストが多数参加した豪華な饗宴となっています。彼らのライブでは定番の "R.I.P." や "Il ragno" といった曲から "Cento mani cento occhi" "Quando la buona gente dice" といった最近のライブではあまり取り上げられなかった曲まで彼らの歴史を俯瞰できるような選曲が嬉しいです。個人的には Mauro Pagani (vln) の参加により地中海色を全面に押し出した "Canto di primavera" がオリジナルの持ち味を最大限引き出したベスト・テイクだと思いますが、他のどの曲も現役バンド Banco の実力を遺憾なく発揮した素晴らしいパフォーマンスを見せつけてくれます。残念なことに収録時間の関係からコンサート模様を完全には収録していない上に、当初予定されていたDVDでのリリースも見送られてしまったのですが、このアルバムの売れ行きが好調なら映像作品もリリースされるかも知れません。ちなみに長ったらしい副題は30年間を日にちで表していて10,957日のことです。それから25周年記念コンサートの模様を収録したライブ・アルバムも予定されているという話もあります。

Dance

Franco Battiato / Last Summer Dance (LIVE) (2003) Columbia, COL 513706 2. (全29曲) [CD-Text]

イタリア音楽界の巨頭 Franco Battiato の最新2枚組ライブ・アルバム。2003年の夏のツアーからの収録で、p, key, g, b, ds の5人編成のバンドと Nuovo Quartetto Italiano という弦楽カルテット、さらに Gabriele Comeglio Band なる管楽グループを従えた大編成による変幻自在の演奏を堪能できます。1枚目は比較的最近の曲をアルバムに忠実なアレンジで聴かせ、PFM の "Impressioni di settmbre" のカバーをはじめ、"Gommalacca" や "L'imboscata" からの曲を中心に、"Atlantide" や "Caffé de la paix" といった"Caffé de la paix" からの曲や "L'oceano di silenzio" や "E ti vengo a corcare" といった "Fisiognomica" からの曲も取り上げられています。2枚目は80年代の曲を中心にしたクールな曲が並び、PFM がカバーした "Bandiera bianca" を含む初期4曲のメドレーやポップ・アーティストとしてのデビュー盤 "L'era del cinghiale bianco" からから表題曲を含む3曲が取り上げられるなど彼の長い音楽活動の重要曲を網羅した名曲集となっています。2枚組の割りには収録時間が各50分弱と短いのが少し残念ですが、"E ti vengo a corcare" や "La cura" といった代表曲での観客の盛り上がりにはものすごいものがあり、彼の人気の高さを再認識できる作品に仕上がっています。パッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

Abitudini

Collage / abitudini e no (2003) Collage, 014. (全11曲)

'70年代半ばから活動を続けるラブ・ロック・グループ Collage のオリジナル・アルバムとしては実に久しぶりとなるニュー・アルバム。冒頭とラストに旧曲のリミックスを含むものの、残り9曲はバリバリの新曲が収録されています。メンバーは前回のベスト・アルバムから若干の変動があり、Tore Fazzi (vo, b), Piero Fazzi (vo, g), Mario Chessa (key, p, vln, cho), Davide Moscatiello (ds, per) に加え、前作でのCarmine Migliore (g, cho) に替わって Nick D'Alessio (g) の5人となっています。リミックスの "Due ragazzi nel sole" と "Tu mi rubi l'anima" 以外の新曲は全てアレンジも手掛ける Tullio Pizzorno の作詞/作曲によるもので、バンドとの強固な関係が窺えます。電話のダイヤル音で始まる "Quando non sorridi" では柔らかなハイトーン・ヴォーカルを生かした哀愁漂うラブ・ロックを聴かせてくれます。ギターの爪弾きに導かれて始まるタイトル曲 "Abitudini e no" は語りかけるようなヴォーカルと控え目なバックが切なさを際立たせています。"Occhi neri" はゆったりとしたバラードで、切々と訴えかけるようなヴォーカルが胸を締めつけるような哀感を醸し出しています。どの曲も適度にポップでありながらも「甘さと切なさの大盤振る舞い」といった典型的なラブ・ロックの要素を押さえており、録音のクリアさと相まって洗練された新感覚のラブ・ロックとして完成されていると思います。唯一の難点は入手の困難さで、彼らのサイトからの通販のみ (しかも今のところイタリア語のみ) となります。

Caramella

Samuele Bersani / Caramella Smog (2003) Ariola, 82876570472. (全11曲) [CCCD]

若手カンタウトーレ Samuele Bersani のオリジナル・アルバムとしては約3年振りの5作目となる最新作。従来通りほとんどの曲を彼自身が作詞/作曲しており、彼と共同でプロデュースやアレンジを担当している Roberto Guarino が多くの曲で詞を共作しています。オープニングの "Socio di minoranza" から肩の力の抜けたさりげない歌声で魅了してくれます。"Il destino di un VIP" ではカントリー&ウェスタン風の曲調にコミカルな要素を加えた独特の作風を披露しています。Sergio Cammariere がピアノとヴォーカルで参加している "Se ti convincerai" はジャズ・テイスト溢れるピアノに乗せて歌われる物憂げなヴォーカルがムーディーな雰囲気を醸し出しています。ユーモラスなメロディが印象的な "Concerto" では彼のさり気ない歌声と相まって摩訶不思議な空間を作りだしています。Fabio Concato がゲスト参加している "Binario tre" では言葉数の多い曲を息のあったデュエットで聴かせてくれます。ラストのタイトル曲 "Caramella smog" は Zenima のエキゾチックなコーラスと Mauro Pagani によるスライド・ギターにより浮遊感溢れる曲に仕上がっています。一つ残念なことは BMG Ricordi の新譜はCCCD仕様になってしまっていることで、本作も例外ではありませんでした。

Mediterraneo

Eugenio Bennato / che il Meditterraneo sia (2002) Tranta Power - Rai Trade, ERE 0141052. (全12曲)

NCCP や Musicanova での活躍でも有名なイタリア・トラッド界の大御所 Eugenio Bennato の最新アルバム。オープニングのタイトル曲 "Che il Mediterraneo sia" から彼が取り組んでいる汎地中海的なトラッド・テイストが炸裂しており、北アフリカを想起させるパーカションと女性コーラスとを伴った躍動感溢れた曲に仕上がっています。"Ninna nanna 2002" は彼による男声バージョンと Pietra Montecorvino による女声バージョンが収録されており、男声バージョンでは女声コーラスを伴って彼の渋い歌声を聴かせ、女声バージョンでは Pietra によるドスの利いた歌声とバイオリンとの絡みがエキゾチックさを強調しています。"Taranta sound" では彼の得意とするタランテラのリズムに乗せてエキゾチックな汎地中海サウンドを体現しています。"Popolo di tammuriata" では前ノリでパーカッシブな曲に乗せたプリミティブなコーラスと絡みつくバイオリンが印象的です。彼が探求を続ける汎地中海的なトラッドの現在形を表す好サンプルに仕上がっています。デジパック仕様で、封入されているブックレットにはイタリア語の他、英語とフランス語で Eugenio による挨拶文と全曲の歌詞が掲載されています。

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