Musicadentro

第72号 (01/01/2006)

明けましておめでとうございます、皆さんいかがお過ごしでしょうか?年初めの今回は晩秋に発売されたベテラン勢の新譜を中心にお送りします。今年もこれまで同様よろしくお願いします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Saranno

Riccardo Fogli / ci saranno giorni migliori (2005) Solo Musica Italiana, SMI-A 108. (全11曲)

ベテラン・シンガー Riccardo Fogli のオリジナル曲のみのアルバムとしては本当に久しぶりとなるニュー・アルバム。今回は半数以上の曲を Gatto Panceri が作曲しています。オープニングはその Gatto のペンによる先行シングルにもなったタイトル曲で、端正なピアノの調べで始まり、ミドルテンポの力強いリズムに乗せて Fogli が歌い上げる佳曲です。続く Fogli も作曲に名を連ねる "Profumo di lei" では哀愁漂うストリングスをバックに切々と歌いかける Fogli らしさが全開の曲に仕上がっています。Pooh 時代の盟友 Dodi Battaglia が作曲とギターで参加した "Amori belli amori brutti" は若き日を想わせるような染み入りような叙情を感じさせる美しい曲で、歌声も還暦が近いとは思えないほど若々しいです。Fio Zanotti が作詞で参加している "Per te io canto" は叙情的なバラードで、伸びのある Fogli の歌声が響き渡るスケール感のある曲です。ピアノの端正な調べで始まり、ドラマティックな展開を聴かせる"Io non canto (senza te)" では胸を締めつけるような哀感を感じさせるヴォーカルが印象的です。いまだ青春の光と影といったイメージの、年齢を感じさせない若々しさが全開の Fogli らしい作風で統一させている作品に仕上がっています。

TiAmo

Mango / ti amo così (2005) Columbia, 82876743282. (全12曲) CD-Text

ベテラン・カンタウトーレ Mango こと Giuseppe Mango の最新アルバム。今回もほとんどの曲は彼自身の作詞・作曲となっています。オープニングのタイトル曲 "Ti amo così" はゆったりとしたリズムに乗せて、彼の特徴であるファルセットを多用した甘い声で歌いかけるラブ・ソングです。続く "Di quanto stupore" ではリズミカルなギターのリフをバックに語りかけるように歌われ、叙情的なパートが突如現れたりする変わった感じの曲です。"D'amore sei, d'amore dai" はファルセットによるハイトーン・ヴォーカルが印象的なイタリア風AORといった趣の曲に仕上がっています。"Il dicembre degli aranci" では奥様で Matia Bazar の2代目ヴォーカリストだった Laura Valente とのデュエットを聴かせて、育児休業していた Laura の美声を久々に堪能できます。南ヨーロッパの路地を思わせるような雰囲気の"Così è la vita" ではスパニッシュ風のギターをバックに囁きかけるようなヴォーカルを聴かせてくれます。"I te vurria vasa'" は包み込むようなキーボードオーケストレーションに乗せてゆったりと歌い上げる叙情的で荘厳な曲に仕上がっています。ラストは北アフリカを想起させるアラビアン・モードを多用した "Mille male penziere" で締めくくっています。

Ciliegie

Mario Castelnuovo / Com'erano venute buone le ciliegie nella primavera del '42 (2005) Rai Trade, RTP0088. (全13曲)

すでに20年以上のキャリアを誇る個性派カンタウトーレ Mario Castelnuovo の約5年振りとなるニュー・アルバム。"Radio valzer" というタイトル通り、ラジオのチューニング音を効果的に配したオープニング曲で始まり、クラシカルなアレンジに乗せて彼の語りかけるような渋めのヴォーカルが印象的な佳曲 "L'Ave Maria di un clown" に繋がっていきます。"Piccolo giudice (siciliana)" ではシンプルなギターに乗せて囁きかけるように歌う前半部から、地中海トラッド色溢れる女性コーラスが盛り上げる後半部へと大きく展開するドラマティックな曲です。"Compagnia d'arte scenica viaggiante" は管楽器を多用した少しコミカルな雰囲気のある曲で、彼のリズミカルな歌声が曲調に合っていて温もりを感じさせます。軽快なリズムに乗せて歌われる "Le galline del convento delle suore di clausura (sono malate)" ではジャズの影響を感じさせる軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。地味な作風ながらクラシック、ジャズ、トラッドなどの要素を巧みに取り入れた手の込んだ作品に仕上がっています。

CariMiei

La Camera Migliore / Cari miei (2005) Due Parole, DP00008. (全14曲)

2003年にアルバム・デビューした女性ヴォーカルを擁する若手バンド La Camera Migliore の2年振りとなるセカンド・アルバム。メンバーは Georgia Costanzo (vo), Marco Balducci (g, vo), Francesco Fanciullacci (g), Matteo Giannetti (b), Davide Miano (ds, perc) の5人編成となっています。囁きかけるようなヴォーカルが印象的な耽美なオープニング曲 "Panico" で始まり、続く "Bordeaux" では弦楽四重奏を加えてコケティッシュな歌声を聴かせてくれます。勢いのあるギターのリフで始まる "Il condominio" はキュートなヴォーカルが弾ける軽快でポップ色の強い乗りのいい曲です。囁くように歌われる "Franz" では消え入るような叙情が染み渡っていきます。ギターのアルペジオで始まる "Le scarpe dell'orco" は唯一 Marco のヴォーカルをフィーチャーした佳曲で、きらびやかなギターの音色が印象的です。語りかけるようにして始まり、ハードな演奏へと展開していく "I cuochi" の後半のフレーズをフィーチャーしたタイトル曲 "Cari miei" で締めくくられています。囁きかけるようなヴォーカル・スタイルの為か曲調のバリエーションが少ないのが気に掛かりますが、非常に個性的なバンドなので今後に期待が持てると思います。

Alessandro Grazian / Caduto (2005) Trovarobato / Macaco, TRB 004 / MCC 005. (全12曲)

Padova 出身の新人カンタウトーレ Alessandro Grazian のデビュー・アルバム。全曲彼自身の作詞作曲で、演奏でもアコースティック・ギターやマンドリンを担当しています。アルバム全体が彼の奏でるアコースティック・ギターを軸にチェロ、コントラバス、バスクラリネットといった低音楽器を中心としたアコースティック・アンサンブルで彩られ、チェンバー・ロック風のアレンジによって統一感のある作品となっています。オープニングのタイトル曲 "Caduto" からチェロによるバッキングにハープやバスクラリネットが絡む絶妙のアンサンブルに乗せて憂いのあるヴォーカルを聴かせてくれます。続く "Ammenda" ではギターによるコードカッティングをバックに畳み掛けるように歌い、バスクラリネットによるオブリガートとチェロとの絡みがヨーロッパの伝統を感じさせてくれます。リズミカルなチェロによるバッキングが印象的な "Tattile" では伸びのある歌声を聴かせてくれます。バスクラリネットによる軽やかなイントロが印象的な "Novizio" はフランスの Yves Duteil を想わせる牧歌的な小品です。3拍子の舞曲風のアレンジが施された "Serenata" は民族色のあるダンスチューンに仕上がっています。いわゆるヒットチャートは無縁のアーティストだとは思いますが、デビュー作でありながらも非常に深みを感じさせるカンタウトーレ作品となっているので今後の注目株です。

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