Musicadentro

第16号 (24/07/1999)

いよいよ梅雨も明けて本格的な夏到来といった感じになってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回はプログレ系のバンドのニューアルバムを中心にお届けします。どのバンドもかなり久しぶりのアルバムなので、かなり気合いの入った出来となっています。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Locanda delle Fate / Homo homini lupus (1999) VM 2000 Records, VM CD 066. (全11曲)

伝説のプログレバンド Locanda delle Fate の22年ぶりのセカンドアルバム。オリジナルの7人のメンバーの内、ギタリスト2人とキーボーディスト1人の計3人が正式メンバーで、リズムセクションの2人がゲスト参加しています。全体的に以前のような構築的な音作りではなく、安定した演奏に乗せて歌心溢れるヴォーカルを聴かせるタイプの曲で占められています。1曲目の "Homo homini lupus" はラテン語の歌詞で歌われており、重厚なコーラスが曲の厳かな雰囲気を盛り上げています。"Stanotte dio che cosa fa?" はアコースティックな肌触りのフォークタッチの佳曲になっています。"Ojkitawe" は軽快なインスト曲で、さわやかなコーラスが色を添えています。"I giardini di Hiroshima" は原爆投下された広島の現在の平和な様子が歌われており、ほのぼのとした曲調が印象的です。全体として演奏が充実したさわやかなラブロック風に仕上がっており、完成度は非常に高いと思います。

Zerozen / Zerozen (1998) CX Publishing, 37-494024-10. (全11曲)

ヴォーカルの Francesca Gastaldi 嬢とギターの Andrea Zuccotti からなるデュオのファーストアルバム。正確にはプロデューサーの Alberto Riva を加えた3人によるプロジェクトのようです。あまりイタリア色が強くなく、どちらかと言えばスウェディッシュ・ポップに近いタイプのサウンドです。それでもイタリア語のヴォーカルが乗ると結構イタリアっぽい感じが出るのが不思議な所です。1曲目の "La canzone nel sole" は乗りのいいベース音に導かれリズミカルに歌われる曲で、終盤のアコーディオン音色のキーボードも印象的です。また、3曲目の "Hypnotrips" はムーディーなシンセ音に乗せて Francesca 嬢のアンニュイなヴォーカルが不可思議な雰囲気を漂わせた佳曲です。5曲目の "Memorie di Atlantide" はスウェディッシュ・ポップ風の導入部からサビに入ると突如イタリア色が強くなる所が面白いです。ヴォーカルがとにかく魅力的なので、女性ヴォーカルファンにはお勧めです。

Mad Crayon / Diamanti (1999) Mellow Records, MMP 342. (全8曲)

叙情派シンフォニックロックバンド Mad Crayon の約5年ぶりのセカンドアルバム。メンバーは key×2, g×2, b の5人で、ヴォーカルは key の2人が兼任しています。前作では英詞とイタリア語詞半々で歌われていたのに対し、本作ではイタリア語詞のみとなっています。このバンドは力で押しまくるタイプではなく、練り上げられた曲構成を巧みなアレンジと堅実な演奏技術で表現するタイプで、そういった意味では Genesis に近いスタイルといっていいかも知れません(いわゆるジェネシス・フォロワーではありません)。1曲目の "La ballata dell'uomo nudo" は畳みかけるイントロからヴォーカルパートに入り、小品ながら展開の多いシンフォニックロックらしい曲に仕上がっています。4曲目の "Pioggia di fiori" はアコースティックギターのアルペジオに乗せてじっくりとヴォーカルを聴かせるタイプの曲で、ゲストの女性ヴォーカルとのコラボレーションもよく、彼らの静の部分が際立った曲になっています。10分を越す大曲の "L'allegra brigata" はヴォーカルが徐々に曲を盛り上げ、次第に演奏の比重が高くなってくる彼らの構成力の巧みさを見せつける曲に仕上がっています。

Lisa / L'essenziale (1999) PPM, 74321671332. (全12曲)

ファーストアルバムも紹介した Lisa こと Annalisa Panetta のセカンドアルバムが早くも登場しました。前作に引き続いて作詞 Guido Morra、作曲 Maurizio Fabrizio のコンビによる曲が半数近くを占めており、非常に安定した作品になっています。そのコンビによる1曲目 "L'essenziale" は彼女のダイナミックな歌唱力が堪能できるドラマチックな曲に仕上がっています。また彼女自身が作詞で参加している "In fondo all'anima" はピアノに乗せてじっくりと情感豊かなヴォーカルを聴かせる美しいバラードです。"Non uccidermi" はいかにも Maurizio Fabrizio の曲らしいイタリア的な情感を高い歌唱力で表現している佳曲です。静かなピアノに導かれる "Un'ilusione" はもの悲しい雰囲気のバラードで、バックに流れるストリングスが切なさを盛り上げています。"Sarà domami" は軽快なリズムのアップテンポなナンバーで、彼女の張りのある歌声が楽しめるポップな曲になっています。全体的にバランスの良い作品に仕上がっており、今後の活躍が期待できます。

Barrock / La Strega (1999) Mellow Records, MMP 371. (全9曲)

'80年代から活動している Poles 3兄弟を中心としたシンフォニックロックバンド Barrock の約5年ぶりのサードアルバム。今作でも女性ヴォーカリストは参加しているものの、とうとう歌詞のある曲は無くなって全編インストゥルメンタルになっています。流麗なピアノから始まる "Nell'antro della strega" は彼ららしい畳みかけるキーボードワークが特徴的な小品です。続く "La mutazione" は展開の多い如何にもシンフォニックロックらしい曲で、中間部の静のパートでは高音部を活かした叙情的なギターソロを聴くことができます。"Il giullare" は Poles 兄弟による典型的なキーボードトリオスタイルの曲で、彼ら(特にキーボード)の演奏水準の高さを伺い知ることができます。また、"Romanza" はゲストのフルートが活躍する叙情的な小品で、"La mutazione" のテーマが再現されています。ラストの "Orient express" は軽快なキーボードワークが印象的なアップテンポなナンバーです。

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